BABAPEDIA part.3(疑問だらけの建築業界編)
2018.11.09
©️BABAKEN&Co
大工になった僕はこの業界の様々な疑問にぶつかります。
・日本の家の「性能」
・日本の家づくりの「お金」
・日本の家づくりの「仕組み」
この3つについて僕が疑問に思ったことをお話します。
僕が生まれ育った家は、僕と同い年です。
築30年のthe日本の農家の家です。
また、小学生の時に離れが増築され
築20年の小さい平屋にも住んでいました。
この2つの家に共通して言えること。それは
「夏は暑くて、冬は寒い。」
本当に、この一言に尽きます。
そしてこれは、太田含め群馬で育った
僕ら世代はみんな経験してますよね?
夏はサウナのように蒸す。
冬は窓が(結露で)びしゃびしゃになる。
大工になった僕は、建築工法を学びつつ
生活環境をよくするにはどうすればいいのか?
という、そもそも住宅が果たすべき役割について
独自に調査をしていました。
たくさんの書籍、業界紙、webで調べていくうちに
驚愕の事実にたどり着きました。
端的に言うと
日本の(1番量産されている)家は
世界的に見れば、昔からずーっと時代遅れ。
(だけど、今まで住んでいた
昔の家はとんでもなく低い性能だったから
新築すれば、「良くなった」とは確実に思えてしまう。)
だけど、もっといい性能の家は”普通に”建てられる。
ということでした。
日本では、「省エネルギー基準」というものがありますが
現在は義務ではなく、目標どまりです。
多くのハウスメーカー、工務店では、この基準に対し
「すでに満たしています!」と声高に叫んでいますが
その実は、「国の基準がそもそも低い。」のです。
「そんなに頑張らなくても、満たせる。」のです。
このことは一般の人はおろか、この業界にいる人間ですら
知らずに鵜呑みにしている可能性は非常に高く
現場の職人さんレベルの認識度で言えば、壊滅的な状況であると言えます。
これは大工をやっている身だからリアリティを持てますが
現場レベルの「工法以外の知識の習熟度」はかなり低いです。
収め方(組み方、取り付け方など)はピカイチだとしても
そもそもの「家の性能に関する知識」は圧倒的に不足しています。
実際、何がどう時代遅れなのかは別記事に書きますが
このことは少なからず僕にショックを与えました。
「俺が作っている家は、いい家なのか?」
この疑問から、さらにたくさんの知識と見識を広めることに繋がります。
家づくりの金額を出す際に「坪単価」×坪数が基本となり
そこからオプションなり足したり引いたりするのが
一般的ですが、「坪単価」の明確な定義はありません。
多くの場合は、照明器具は別途。宅内給排水工事は別途。
など含まれていない工事が結構あります。
どこまでを含んだ「坪単価」なのかは業者ごとにまちまちですし
必ず「●●坪以上」などの条件が付きます。
なぜなら、家の中でお金がかさむ部分はほぼ決まっており
(キッチン、トイレ、お風呂など設備が入る部分)
何もない空間が大きければ大きいほど、相対的に単価が下がるからです。
例えば、すごく単純に考えて
ユニットバスと1部屋しかない家があったとしましょう。
(ありえないですが。)
ユニットバスが1坪100万円かかるとして
そのほかの部屋は1坪が20万円でできるとします。
そうすると、
①ユニットバス1坪+部屋1坪(20万円)の家
(100万円+20万円)÷2坪=60万円/坪
②ユニットバス1坪+部屋5坪(100万円=20万円×5坪)の家
(100万円+100万円)÷6坪=33.3万円/坪
といったように
あっという間に単価が変わってしまうのです。
なので、坪単価を信じて話を進めると、「騙された」
みたいな感じになりやすいので、あくまで参考程度に
とどめてもらいたいのですが、この方式で一番厄介なのは
どこにどれだけお金がかかっているのかわからない。
ということです。
ではなぜ?この方式が広く広まっているのでしょうか。
一式いくら。
僕も営業をしていたのでわかりますが、
これほど売る側にとって楽な数字の出し方はないです。
詳細がないのであれば、なんとでも言えるのですから。
一式ではないにしても、大きなくくりでの見積もりは
検討する余地がないのでお客さんにとっては不明瞭でしょう。
この方式で契約させるように育ててきたこの業界には
本当に頭が下がりますね。
実際、建築の見積りは関係業者や、必要な材料が多いため
積算するのが大変ということもありますが、
僕個人としては、この方式に疑問を持ちました。
なぜなら、この方式では
お客さん側で予算配分がほぼ出来ないから。
見積もりの妥当性が判断できないから。
何の工事にいくらかかっているかを把握できれば
建設的に予算の配分を建築業者側、施主側の双方で
協力して進めることが可能です。
そして、そもそも見積りは
金額の妥当性を検討するためのものですから
それがしづらい形になっているのはとても疑問でした。
例えば、一式いくらで出た見積もりから、
200万円値引きされたとして。
その値引きが本当にされたものなのか、
ただの数字遊びなのかあなたは判断できますか?
大工としてハウスメーカーの現場に出入りする中で
すごく感じたのは
「施主と建築業者(営業、現場監督、職人)の熱量の差が大きいな。」
ということです。
お施主さんは新築の家への期待に胸を膨らませています。
しかし、現場のテンションはそれほどでもない。
現場にいても、
現場監督さんは最低限しか顔を出さない。
営業さんにはほとんどお目にかからない。
職人も叩かれた手間と圧縮工期に追われ、
スピード勝負か連日残業。
それでもちゃんと建つようにシステム化されているのは
さすがハウスメーカーといったところでですね。
(もしくは、さすが日本人といったところでしょうか。)
が、中にはそれが事故やクレームにつながることがよくありました。
よくあるのは伝達ロス、ミス。材料の手配ミスなど。
床の色が間違っていて、気づくのが遅く、
結局張り替えないまま終わった現場もありました。
なぜ?こんな単純なミスが起こるのでしょうか?
それは、
大量生産を目指す合理化、システム化の副産物です。
営業は、次から次に契約を取らないといけない。
現場監督は、掛け持ちで何棟も担当しないといけない。
職人は、手間が叩かれ、早く終わらせないといけない。
逆に、やったらやった分だけ稼げる。
それはとても素晴らしいこと・仕組みだと思いますが、
こと住宅に関してそれを当てはめるのは、僕には疑問に思えました。
建築は物理的な時間の制約を受けることが多い業種なので
1人の人間が管理、関われる数には限りがあると思います。
実際、僕が知る優良な工務店さんは、
社員数に応じた1ヶ月あたりの上棟数を制限しています。
人気の工務店さんなので、売ろうと思えば
いくらでも建てることは可能だと思います。
しかしちゃんと目の行き届かない現場は嫌だそうです。
これには僕も同感です。
お客さんは、おそらく最初で最後の1棟ですが
建築業者にとっては、下手したら何百棟の中の1棟。
嫌でも生まれてしまう1棟に対する熱量の差を
いかにして埋めるのかは建築業者の課題でもあり
仕事の幸福度を上げるポイントでもあると考えます。
現在、日本の家づくりは工期短縮・効率化が進み
早いところでは着工から2、3ヶ月程度で
引き渡しまでしてしまうところも結構あります。
ローンの返済は、おそらく着工あたりから始まるので
賃貸の家賃とローンの返済が重複する期間が少なくなるのは
施主側のメリットとしては大きいです。
しかし、実際現場で僕が思ったことは
工期に余裕を持たせることの方がメリットが大きい
ということでした。
工期に余裕がないと主に以下のようなリスクが発生します。
・工事を強行する。
・トラブルがあった際(部材の納入ミス、搬入漏れ)
に作業が進まず、そもそも少ない工期がさらに減る。
・作業が雑になる。
・手間をかけたいところに、かけられない。
・他業種の職人が同時に現場に入ることにより、
さらにトラブルのリスクが増す。
これらは総じて
ベストな仕上がりにできないことにつながるのですが
これは完成時の見た目の仕上がりではなく
それが長持ちするかどうかという品質の部分に影響します。
完成時の見た目はきちんとしていなければならないので
誰でもちゃんとします。しかし
家の場合は、問題はそれが長持ちするかどうかなのです。
効率よく作業することは大切ですが、
それは必要な作業を端折ることとは違います。
そして、丁寧な施工には
やはりそれなりの時間が必要になることも事実です。
このような様々な疑問を考えた結果、
僕は自分が納得のいく家づくりをしたいと
考えるようになりました。
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